ハンドメイドの確定申告2019 とりあえず棚卸やってみた

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ハンドメイドの確定申告2019 とりあえず棚卸やってみた

めでたく年も明けて、無事二度目の確定申告が巡ってきた。
製造・物販という初めての仕事で戸惑ったのが棚卸。
原則としては年度末(ということは12/31日)に行わなければいけない。前回は確定申告の直前に、面倒だなあと思いながらしぶしぶやった。青色申告の場合義務づけられているし、少しでも手間を省こうと一年間エクセルで制作・販売メモを記録してみた。その表を基に年頭早々に(12月31日時点の在庫状況で)棚卸をまとめてみた。

 

前提としての仕訳のポイント

売上原価の仕訳では、材料の着物地だけを[仕入高]で記帳。その他のミシン糸や接着芯などの副素材は[消耗品(製)]とした。比率的には、メインの着物地に対して副素材が3倍ほどかかっている。でも制作時に購入する副素材はどんどんなくなっていくけれど、気に入ったものに出会ったときに購入する着物地は逆になかなか減らない(むしろ増えている)。ゆえに未使用着物地と売れていない製品だけを棚卸資産とすることにしたのだ。

売上げについてもおさらいしておこう。ネット販売では、売れたタイミングで[売掛金]と[売上高]で処理。送料は[立替金]と[未払金](クリックポスト等のカード払いの場合)もしくは[現金](レターパック等窓口で現金払いした場合)。

入金されると、連携していたジャパンネット銀行から自動で取り込まれるので、仕訳を確認して更新する。この機能、記帳漏れがなくてとっても良い。マネーフォワードは一番ライトなプランが値上がりしてしまった。それでも月額980円(年払いの場合)だし、上記のように手間も省けるし、一度プラットフォームにしてしまうともう他には移れなさそう。

にしても、まだ入金時にちょっと混乱するので、ここにも仕訳例をおいておこう(実売の場合は[現金]と[売上]だけとシンプル)。
たとえば一万円の売り上げに対して販売手数料が10%、銀行振り込み手数料が100円で、送料200円を払った(立替えた)場合はこんな感じ。実際の振込額は10,000-1,000-100+200=9,100円。

借方勘定科目          貸方勘定科目
普通預金     8,900      売掛金   10,000
販売手数料    1,000
支払手数料    100
普通預金     200       立替金     200

合計金額   10,200            10,200

 

棚卸のために[仕入・制作・製品管理表]をつける

去年は残った着物と制作して売れ残った製品をざっくりと数えたけれど、これがとっても面倒。本来は実物で数えるのが棚卸。でも売り上げもそれほどない個人営業では、それほど厳密でなくてもよさそう。K’s R は仕入材料も消耗品で落としてもかまわないというレベルなので、数えなくても済む方法を考えた。要は仕入れた着物地と金額を記入し、制作・販売のタイミングで利用分を差し引いていけばよいのではないか。ということで、以下のような表をエクセルで一年間つけてみた。

購入日内容仕入額A試作品
利用分B
製品
利用分C

未利用分①
(A-B-C)

製品数販売数売れ残り
製品数

売れ残り
製品額②

1/10赤の銘仙5,0001,0003,0001,0003211,000
2/20紺の大島紬10,0002,5007,50003300
・・・・・・        
期末合計 15,0003,5008,0001,0006511,000

 

初年度であれば、棚卸額は仕入高未利用分①と売れ残り製品額②の期末合計を足したものとなる。が、二期目はどうするんだ? 計算としては、前期仕入の棚卸分から今期利用した分を引く。次に今期仕入額から利用した分を引く。ついで前期棚卸製品から今期売れた製品額を引き、今期制作した売れ残り製品額を別途計算する。この四つの額の合計、ということはわかるんだけれど、会計処理がわからない。

問題は製造販売のしくみと対応する、仕入とか製品とか商品とか材料とか原価とか、そういった会計用語がきちんと理解できていないこと。おまけに、前期は白色で売り上げもわずかだったし、かなりアバウトに仕訳した結果(しかもやったことをあらかた忘れている)、今期に正しく繰り越されていないということも判明。といっても仕方がないので、今期棚卸額で修正することにした。

検索すると、製品に関しては以下のように決算仕訳しろとある。

借方勘定科目          貸方勘定科目
期首製品棚卸高  25,000    製品       25,000・・・前期棚卸製品繰越額
製品       11,000    期末製品棚卸高  11,000 ・・・*1

*1 期末製品棚卸高=期首製品棚卸高-残ったもので今期売れた額+上記の表の今期[製品売れ残り額②]
つまり期首に25,000円残っていた製品が15,000円売れ、今年制作した売れ残り1,000円と合わせて期末には11,000円となった、ということ。

悩ましかったのは着物の仕入高。よく見たら、去年は期末商品棚卸高として仕訳してあった。会計用語の[商品]は販売目的で仕入れた(完成した)品物なので、材料である着物はこれにあたらない。今期からは[材料]と[期末/期首 材料棚卸高(製)]で処理することにした(とすると、仕入高ではなく、[材料仕入高(製)]のほうが良いのか?→後述**)。もし前期もこれで処理していれば以下のようになる。

借方勘定科目          貸方勘定科目
期首材料棚卸高(製) 30,000    材料        30,000・・・前期棚卸材料繰越額
材料         10,000    期末材料棚卸高(製)10,000・・・*2

*2 期末材料棚卸高(製)=期首材料棚卸高(製)-その後の利用額+上記の表の今期[未利用分①]
期首に材料として着物地が30,000円分残っていたがその後21,000円分利用し、今年の未利用分の1,000円との合計が10,000円となった、ということ。

*1と*2をさっと出すには、前期の制作・販売管理表も引き続き更新し続けなければいけない。在庫のあるものだけを抜き出して別表にまとめておくか、棚卸表として今期と合体させる、などの方法がある。後者だと期末合計の数値だけを見ればよいので、それが楽かも。

今回の棚卸表としては、前期(まで)の表と今期の表を分けているので、以下のような表を付け加えた。

 前期繰越額-
今期利用/販売済み額
今期分残額合計
製品10,0001,00011,000
材料9,0001,00010,000

棚卸合計額 21,000円

これで棚卸表が出来た。棚卸合計額も無事決算書の貸借対照表>棚卸資産に反映された。棚卸資産のうち[期末製品棚卸高]は損益計算書に、期末材料は[期末原材料棚卸高]として製造原価報告書に記載されている。

厳密には、この数値を実際の在庫材料と在庫製品と照らしあわせなければいけない。そのうえで差損も出して処理する。が、上述のように小規模の場合、おおまかに在庫が把握できれば問題ないだろうと、これでよしとする。

棚卸表は(無料の)テンプレートを使えばもっと楽なのかもしれない。検索すると色々ヒットする。でも自分に分かりやすいのが一番と、試行錯誤したこれが結果。制作した都度利用分を記入していく、というシンプルな方法だけれど、気ままに縫っているので記入忘れもあるし、ハギレで小物を作ったりしたものは計上しにくい。

そこはおおらかに考えて、トップスが一着作れる分量以下になったら、材料額は0になったとみなすことにする。購入したもののなかで製品一個分の材料単価は仕入額の三分の一程度。ジャケットやブラウスやスカートでは二分の一。このあたりの額を目安にしている。

ところで K’sR の場合、新しいデザインや異なるタイプの生地を利用する際、最初の一点はたいてい試作品となる。なかなか思うように作れなくて何度か試作することもある。あるいは受注用参考作品として、ネット掲載用につくることもある。これらは製品ではないので、資産にはならないだろう。ネット掲載用や展示用であれば[宣伝広告費]や[販売促進費]、新作のための試作であれば[研究開発費]が妥当か。

ただし、製品を自分の私物とした場合は違うようだ。借方が[事業主貸]貸方が[家事消費等]と仕分ける。これは売上となる。つまり、自分で買ったことになるのだ。試作品の着心地や使い方を検証するなら研究開発になるけれど、楽しく着飾ることが目的だと売上になるということ? 失敗作や、完成度が低くて売れないけれど部屋着にはなる、というレベルは? あるいは使って感想を聞かせてね、とモニター用に友人に差し上げたものは? う~む。

境界線はあいまいで、たぶん厳密に線を引くのは不可能だと思う。ま、どれも[研究開発費]でいいか、という結論。よって上記[仕入・制作・製品管理表]の[試作品利用分B]も決算の時に[研究開発費]として仕分ける。この勘定科目はマネーフォワードにはなかったので、新規につくった。

**仕入高と材料仕入高(製)の違いについて少し調べた。仕入高は仕入れた商品ということ。が、材料も含まれるとの解説もある。ハンドメイドの仕訳で検索すると仕入高としているところが多いけれど、ハンドメイドも製造業だとすると、材料仕入高(製)(もしくは材料費)のほうがすっきりはする。仕入高だと売上原価となり、材料仕入高(製)だと製造原価となる。

これまで製造と売上の[原価]についてよく理解していなかった。売上原価とは、売れたときに計上される、仕入れた商品や製造にかかった費用。製造原価は製造するために必要な費用・原価。製造原価は売上原価に含まれる。ややこしいけれど、販売にかかる原価を売上原価、製造に関する原価を製造原価と考えればよいようだ。

残高試算表の損益計算書には、ちゃんと売上原価と製造原価が別々になっていて、製造原価の合計は売上原価にも計上されている。決算書にある製造原価報告書は損益計算書の補完ということ。これできちんと製造にかかるコストだけを見ることができる。

私はリメイクの副素材だけを[消耗品(製)]と製造原価に入れていたわけだけれど、厳密にいえばミシンの修理も[修繕費(製)]としなければいけなかった。カメラやパソコンや車の修理と分けなければいけないのだ。本来ならば。

が、こんな小規模ではそこまで神経質にならなくても良い。棚卸資産も額に変わりはないし、確定申告の結果も同じになる。

参考サイト
棚卸しとは何か?在庫管理の方法
商品(棚卸資産) – 勘定科目・仕訳例
売上原価とは?製造原価との違いや計算方法をわかりやすく解説!
ハンドメイド経理講座 | ハンドメイドは製造業。在庫の管理をすることが経営管理・経理につながる理由
原材料に関する意外と知らない簿記のルール3選
材料費

 

前期の反省と今期の目標などを考察する

さて、私は去年いくら稼いだのだろう。売上から売上原価と経費を引いた控除前所得金額を確認する。この額は、私が制作・販売に費やした労力に対して妥当だろうか? さらに、売り上げに対して売上原価の比率は妥当だろうか、経費の比率はどうだろう。

その売上原価、実は無茶苦茶低い。これ以上下げようがないほどである。主材料となる着物は、仕入れよりいただくほうが多かったりすることもある。昔から集めたものや、母の残したものも原価には入っていない(使い切れないものやハギレは販売してもよいかも)。

ちなみに、繊維工業の平均原価率は72%程度で、この中には当然人件費(労務費)も入る。個人事業の場合この労働賃金が売上原価に反映されない(だから自分の時給に対する意識が低いし、「売れる」価格設定になってしまう)。そこで控除前所得金額を労務費として売上原価に入れてみると、62%。残り38%の経費のうち、製造原価にあたるものもあるから、ほぼ平均の原価率くらいになるのかもしれない。でも、時給はざっくり最低賃金の半分以下という感触。これでモチベーションを保てるだろうか?

たぶん保てるのである。好きなことをやっているだけだし、作るのが楽しいから。でもなあ。それじゃいかんよなあ。売り上げももうちょっと欲しいし(そんなにはいらないけど)、製造原価の比率を下げたり、経費を下げたりと、できることはあるはず。そのうえで、価格設定。単純に時間換算で価格を設定するということではなくて、頂きたい妥当な価格に見合ったものを制作するというか。

もうひとつ考えさせられたのはの実売とネット販売について。実際の売上比率を見てみると、ネット4に対して実売6。ネットショップで買ってくれた友人もけっこういたので、純粋なネット売上は案外低いのだ。

ただし、展示会などがあるとネット販売に注げる時間エネルギーは減少する。それが結果に反映されているようにも思える。また、実売で爆買いしてくれた友人たちの売上額は、半分ご祝儀と受け取らなければいけない。時間エネルギーのベストな割り振り方も考えなければ。

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