20年前にジャノメのコンピューターミシンを買ったとき思ったことを、今回もまた思った。
ミシン業界って20年たっても同じなんだなぁ…。
同じミシンが直営店や代理店など、複数の販売チャンネルで売られている。それは良いのだが、同じ会社の同じミシンが違う名前で、違う色模様で、場合によっては若干細部の仕様を変えて売られていたりする。仕様・性能の比較をしたいのに、調べてもよくわからない。決めるまでにとても時間がかかる。
生涯で三代目の20年選手も、去年修理に出して部品を変えたせいもあってか、まだまだ現役で使えてはいる。けれどもパワーや縫い目に不足感があって、職業用ミシンが欲しくなった。縫うごとにやっぱり欲しいと思うので、売り上げもないのに買おう!と決意。
だって生涯最後となるミシンだよ。最後の一台は良いミシンをストレスなく長く使いたいじゃない。今のが壊れたら、などという先送りは、ストレスの時間を延ばすだけ。どうせ買うことになるんだから(20年選手は遠からず要修理状態になる)早く買ったほうが得策だろう。
今回JUKIとジャノメを検討して、またジャノメにすることにした。決め手の第一はスピードコントロール。職業用ミシンの最高縫い速度、JUKIが1500針/分、ジャノメが1600針/分と高速で、フットコントローラーの踏み具合で速度を調整する。ジャノメはそれだけでなく、スライドレバーで800針/分まで最高速度を落とすことができる。
その後、JUKIにも速度調整できるタイプもあるとわかったのだが、厚物縫いにはやはりパワーがあったほうが良いし、フットコントローラーも大きくて踏みやすそうだし、職業のなかでも工業用に近いタフさがあるというし、ジャノメにはずっとお世話になってきたし、20年ミシンも気に入ってたし、地元直営店のSさんは電話一本で来てくれるし…とジャノメに決定(JUKIは軽さがメリットと思ったものの…)。
とネットで調べていて、直営店モデルと代理店モデルのどれが同じでどれが違うのか、わけがわからなくなった。なかに、モデルごとの比較表を出しているミシン店があった。
これを見ると、ジャノメの783DXとEP9600(エクシムプロ)が機能が同じ。工業用針、針通し無し、LED照明、電源ON時の針位置は下、針上下ボタン、大型フットコントローラー、フット糸切りが共通。EP9600はサブテンション(=プリテンション 糸のよじれを防ぐ装置)がついていないが、付属品のダーニングプレート(送り歯が布送りさせないようにする)はついている。どちらもオプションで付けたり別途購入が可能。800HKは針が家庭用針使用で糸通し付きというのが相違点。ただし直営店モデルなのでこちらの販売店では購入できない。
エクシムプロは製造がジャノメで販売がベビーロックだが、上記販売店でも購入可。しかもベビーロックの元会社はJUKIなんだからよけいややこしい。JUKIがベビーロックの名前でジャノメを売っているのだ。
それはさておき、表中に名前の挙がっていない機種があった。売ってはいるけれど、オンラインで名前と価格を出して売ってはいけない、というルールがあるようだ。もうひとつオンラインショップには、「値段はお問い合わせください」と、名前は出すが価格は出さないモデルもある。
比較表もショップサイトのわかりやすいところには置いていない。直営店のSさんに聞いても、モデル名まであげてきちんと答えてはくれない。検索をかけても、このあたりのことを解説しているサイトは皆無に近い。横並びに比較されて買われるのを避けたい、というメーカー(業界)ルールが徹底している感じ。
だいたいのことはわかってきた。もうひとつ、783DXと同じスペックで、HS85DXというのがある。これは全国ミシン商工業協同組合連合会の推奨品という組合限定モデル。ミシンの一部の色が783はワインレッド、HS85は濃いグレーで、あとは付属品の内容が少し違うだけ。販売店で購入できる。
値段も少しずつ違ったりして、ここでも混乱する。比較表を掲載していたミシンショップに電話で相談すると、この組合モデルをすすめられた。あとは自動糸切りと糸通しがあるかないか、ぐらいまで選択肢が絞られてきて、考えた。
直営店で買ったほうが最初教えてもらえるし、あとあとのためにも良いのではないかしら。ある程度高くても、授業料とメンテ代(出張で済んでしまう軽微な修繕やメンテは永年無料とSさんは胸を張った)と思えば納得もいく。
一万円くらいなら、と尋ねてみた。色々と小ワザ裏ワザまで出して頑張ってくれたんだけれど、残念ながら届かなかった。申し訳ない。Sさんは、ネットにはかなわない、直営店ではどうしても無理なんです、でも、何かあったら遠慮なく電話してね、ベビーロックも出張でなら見てあげるよ、と言ってくれた。ありがとうSさん。
さて、自動糸切り。糸切が無い下位モデル(783DB、EP9400、800DB)だと17,000円ほど割り安となる。ただし、下位モデルは全て工業用針で糸通しもあきらめなければいけない。工業用針は強度もあり、種類も豊富なので、厚物を縫う場合は工業用が良い、と言われたが…。
迷ったけれど両方有りとした。自動糸切りはこれまでもなかったし、糸通しも壊れて手動糸通しでやってたし、両方無しでも不足なく使っていけたかもしれない。でも、どちらも使ってしまうともうダメ。あとには戻れず、便利さを実感。心からつけて良かったと思う。
家庭用針にはHA×1とHL×5の二種類があって、HLのほうが強度が高い。最終的に選んだのはEP9600HLというHL針を使うモデル。ちなみにHAも使えないことはないもよう。何本か余っている家庭用ミシン針も使えるということ。でもそんなに高いものではないし、針の頭が太さごとに色分けされているのも(オルガン針の場合)とても便利だし、きっとHLを使うだろう。
ところでこの9600HL、ベビーロックの販売サイトには9600(DBという工業用針使用)はあるけれどHLはない。EP9600HLも組合限定モデルなのだ。仕様を比べると、EP9600HLは(サブテンションをつければ)800HXと同じになるということが確認できた。
問い合わせたオンラインミシン店は、電話対応もメール対応も迅速で、直営店よりレスポンスが早かった。尋ねたことには即答で丁寧に答えてくれた。数々の疑問が一瞬ですっきりと解決した。実は購入の最後の決めポイントは、この対応にあった。HP上で出している他の機種の料金も良心的と感じたので、他社に見積もりをとることもしなかった。これ以上選択に時間をかける気力も失せていた。早く職業用ミシンで縫いたかった。
メールで注文すると、メーカーから届いたものを検品(動作確認)してからの発送になるという。それでも4月10日に注文&銀行振り込みで、13日に届いた。注文時に告知されていた予定日より早くてびっくり。カード決済、翌日発送より1日遅いだけ。現金扱いのみとはいえ送料は無料。「町のミシン屋さん」が苦戦するのもわかる。が、オンラインで「町のミシン屋さん2.0」をやっている感じもする。
届いたミシン、家庭用とは勝手が違い、上糸をかけるだけでずいぶん時間がかかった。糸通しに糸が通らないのだ。電話で問い合わせている途中、一度だけ通った。けれども、その後二度と通らない。糸通しが壊れやすいのは知っていたけれど、私が無理なことをしたのかもしれないけれど、これにはめげそうになった。
虫眼鏡で見ると、針穴に入るはずのフックが入らず、針の手前に滑ってきている。電話では、つまようじのようなものでフックの位置を調整してみてくれ、と言われたが、そんなに簡単にできるものではない。かなり頑張ったけれどギブアップ。ダメですと訴えたら、あっさり交換部品を送ります、となった。
これもすぐに届いて、交換も簡単で、初回からばっちり糸は通って、その後順調。直営店で買っていたらこのもたつきはなかっただろう。やっぱり直営店で買う意味はある。あるけれど、フォローも素早く結果オーライなので、今回不満は残らなかった。
その後順調に二か月経過。糸通しも自動糸切りも有りを選んで正解と都度思う。けれども、ニーリフトはじゃまだったりして使わなくなり、糸切のフットスイッチは間違って踏んでしまうことがあったことと、返し縫いしたあと、返し縫レバーのすぐ上の糸切りボタンスイッチを押しやすいこともあって、コードを抜いてしまった。このまま使わないなら取り外してしまおうと思っている。
何故EP9600HLを選んだのかをまとめると以下の4点
①1600針/秒というパワー
②スピードコントローラー →①+②=EP9400(800DB)– A
③自動糸切りつき →①+②+③=HS85DX 783DX — B
④糸通しつき →①+②+③+④=EP9600HL(800HX)– C
( )は直営店モデル。
Aでよければ、HS75DBという組合限定モデルがかなりリーズナブルだった。ただし停止時の針位置が上で、小さなことのような気もするが、リストから外した。販売店モデルと組合限定モデルでは、機能的に同じでも微妙に付属品が異なり、値段も異なる。これをほぼ同じ付属品として価格を比較すると、CとAの差額は約15,000円(直営店モデルでは30,000円)。
ということで、生涯最後のミシンだもの、プラス15,000円出そうじゃないの、とEP9600HLに決定。
購入したショップは、自分で直したり調整したりする場合のサポートが良い。修理に出すとその間の作業が滞る。直営店や町のミシン屋さんの場合も、来てもらうにも持ち込むにも時間的ロスはある。電話アドバイスやメール解説で自分で直せてしまえばそれが一番のような気もする。
付記
ミシンではその昔(20年以上前)少しトラブったことがあった。広告チラシに入っている格安ミシンを買おうとしたのだ。うまく動かない、古くて重い電動ミシンも下取ってほしかった。やってきた販売員二人は、おもちゃみたいな格安ミシンと高価な高機能ミシンを提示。そりゃ高機能が良いに決まっている。うっかり分割で買う気になってしまった。
でもすごく高かったんだよね。確か20万円以上。調べてみると詐欺まがいの売り方でトラブルが続出していた。契約書にサインはしたあとだったけれど、解約を申し出た。何故かと問われ、調べたら色々疑問点があるので納得して購入できないから、と答えたらあっさり解約できた。古ミシンはそのまま引き取ってもらい、おまけの糸セットはいただいた。
その後オンライン(ヤフオク即決価格)で、三分の一かそれ以下の値段で見つけたジャノメを購入。この20年選手が、やはり組合限定モデルであった。
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