縦のものを斜めにしたら 粋なネクタイ 出来上がり!

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ネクタイを縫ってみようかなと、ふと思った。

最初は紺ベースの縦縞を選んだ。ちょっと綿のようにも見える薄手の紬で、ダンガリーっぽい風合いなのに、品の良い控えめな光沢もある。縦縞に横に白いラインが入っている。これを縦でも横でもなく斜めにする。

 

自作派男性に感心しながら試作~完成まで

試作はダウンロードフリーの型紙を利用した。この型紙作者は作り方も公開していたので、それに従って縫ってみた。芯は手持ちの接着芯で、全てミシン縫い。

この男性、自分の仕事にぴったりの柄のネクタイが欲しい、という一心で自作に至り、型紙と作り方を公開している奇特な方。宇宙や天文で教壇にたっているので、星や惑星柄のネクタイが欲しかったのだという。

ネクタイの作り方(型紙無料ダウンロード)

今回調べていて、ネクタイを自作している男性が結構いることを知った。現物をばらして型紙をとり、縫い方を研究している。ある方は、最初はノーマルなネクタイから始まり、ついにセッテピエゲという高度なワザのネクタイまで縫うようになってしまった。しかも手縫いで。 ひたすら感心。

話は戻って最初の一本。薄くて軽い仕上がりで、本格っぽくはないものの、かえって締めやすそう。これもありだろうけれど、商品としては気が引ける。夫の古いネクタイを解体し、その芯で二本目を試作。今度はしっかりとしたネクタイになった。

専用の芯をネットで購入。売り物になるまでは何本か縫わなければいけない。カタカタちくちくとほぼ毎晩縫った。手縫い+一部ミシンの組み合わせでK’sの完成形ができた。

 

驚いた! 着物がこんなにネクタイにハマるなんて

ネクタイがスカーフやリボンと違うのは正バイアスであること。布目に対して45度に裁断しなければいけない。

縦が斜めになると、縞はレジメンタル(風)になる。最初の一本だと、斜めに走る黒紺グレー赤に90度の角度で白のラインが交差する。縦に細長い幅5~9センチの面積に、布地の模様が凝縮される。

驚いた。縦縞とも横縞とも違う表情が生まれている。広い面積で全身を覆う着物の一部を狭く細く切り取っても、本来の縦を斜めにしても、着物地の魅力が全く損なわれない。どころか、むしろその魅力が鮮明になっている。

バイアス裁断は、ネクタイが適度に伸びて締めやすく、かつノットをゆるみにくくするための製法だけれど、斜めにカットされることによって、狭い面積ながら縦の模様と横の模様がまんべんなく、バランスよく切り取られることになる。模様が斜めに流れるのも、小さな面積にダイナミックな動きを出すのに成功している。

斜めってすごい!で、また着物地が、この斜めに生き生きと答えてくれることに感嘆!手持ちの着物地を見る目が一気に「ネクタイ目」になった。これはどうだろう、あれはどうだろうとうずうずして、気が付けば(試作・モニター用以外に)模様違いの11本が出来上がっていた。

 

「和」を超えた着物柄と織りの個性

着物地からつくられたネクタイは結構市販されている。西陣織りや友禅染の和柄が多い。どういう人が身に着けるのだろう。外国人受けをねらったものだろうか。桐箱入りのオーダーメイドネクタイなどは、また違う特別感を提供しているのだろう。

かと思うと、着物産地でネクタイに特化して織られたものもある。たぶんネクタイ用の幅で織られているのだろう。柄は若干の和テイストを残しながらも、既成のネクタイ生地に限りなく近い。

そこには、ネクタイはこういう柄や織りのもの、という固定観念があるようにも思える。どうやら日本の着物ネクタイは、一方はいかにもな和柄と、他方は締めやすい定番ネクタイ織り柄の普及品と、二極分解しているようである。

私が着物地で縫ったものは、この間にいる。もともと”「和」にとどまらない” 着物ばかりを集めていたのでこてこての和柄はあまりないものの、まさかネクタイなんぞになるとはどの着物地も思っていなかった、ネクタイ柄の定番からは少し離れたもの。

縞や格子やドットや小紋などはネクタイ用としてもグローバルな柄模様で、それでもネクタイ用はあの面積を想定して織られている。けれども着物地は違う。

なのに、全く想定されていなかったネクタイに、これらの着物地が水を得た魚のようにハマるのだ。たとえばお召の一種で縫った三本。高級な織りの着物として一世を風靡したのに、いつかほとんど生産されなくなってしまったお召。おしゃれ着として工夫を凝らした色柄模様に面白いものが多い。

スモーキーピンクと赤とグレー濃淡の迷路模様は、中でも一番のお気に入り。黒のジャケットにあわせれば、胸元が一気に華やかになって、でも甘すぎず、渋い大人の味わいもある。ネクタイのジャガード織りと違ってピカピカした光沢がないのも良い。どうだ、こんなの定番ネクタイにはないだろう!? 

K’s Remake.shopネクタイただいま四本のみ(残り四本出品準備中)

 

赤のレジメンタル風もいいなあ。綿の普段着の着物なのに色合いが絶妙。アメリカの政治家の制服みたいな赤ネクタイ、日本で締めている人をほとんど見ない。でも、赤もこんな落ち着いた色合いなら一味違う。軽くて、ナチュラルで、素朴な風合いもあって、とても好もしい。

と自画自賛ばかりでは仕方がないので、何本か友人に見せた。見たとたんぱっと赤の縞を手に取り、夫にと即買いいただいた。普段ネクタイをしない人だからこんなのが良いのよと。お似合いだと私も思ったし、ご本人にも「ひとめで気に入った」とおっしゃっていただけた。とっても嬉しい。

 

ネクタイを贈るってどうなんだろう…

今回出品しているのはハンドメイドのモールと自サイトで、おそらくネクタイを求める男性が検索一発でたどり着く場所ではない。だいたい「ネクタイ」&「着物リメイク」なんて検索ワードに入れないだろう。とすると、ハンドメイド好きで、かつ着物リメイクに興味を持つような女性に、プレゼント用に買っていただくしかない。

ここで疑問が二つ。男性はネクタイを贈られてうれしいだろうか?
そして、何故着物リメイクのネクタイがオンラインショップにあまり出ていないのか?

ズバリ、「皆さんバレンタインにネクタイを贈られてうれしいですか?」 という質問コーナーがあった。答えはいろいろ。

趣味じゃないのを贈られたらかえって迷惑、自分のセンスも試されるのでやめておいたほうが無難、一緒に店に行って買ってあげるのがおすすめ、という人もいれば、好きな彼女から贈られたらめちゃくちゃ嬉しい、大事な仕事のときの勝負ネクタイにする、何本あっても困らないものだからありがたい、という人もいた。

先日、知人がおいしいワインをご馳走してくれるというので、ネクタイを持参した。最近こんなことやってるのよ、という話ついでに。翌日、さっそく今日締めています、自分では選ばない柄なので新鮮です、とメッセージ。そうか、そういう視点もあるのか。

二つ目の疑問。考えられる理由は、作るのが面倒なのに売れないから。

正バイアスのカットは気を使うしテクも必要。しかも、着物は反物の幅が狭い。ネクタイ用の生地は幅が50cm、長さは65cm必要である。これを大剣先と小剣先、中はぎと三枚にカットしてはぎ合わせる。着物でも幅38cmあればなんとか一本(若干短め)作れるけれど、古い着物は幅が足りない。水を通して縮んでいるものも多い。

結局ほとんどのネクタイを、私は4枚はぎで作った。ノットに近いはぎ目は目立たないよう柄合わせも必要で、結構時間がかかる。おまけに、布地を斜めに使うネクタイは、小さな面積なのに分量がかなり必要で、かつ三角の使えない端切れがたくさん出る。限られた着物地の(希少な着物地であれば余計)有効活用には不向きである。

それから「和」のイメージの強さ。和柄は(特に若い)男性にはあまり人気がないだろう。確かにビジネススーツには合わない。つまり、マーケットが狭い。

では贈る側からするとどうだろう。就職祝いやバレンタインにリメイク品を選ぶだろうか? やはり新品のブランド品が候補だろうか。

ただし、メルカリの躍進もあって、消費者の感覚は変わってきていると聞く。リユースに抵抗がない。アンチ大量生産&大量消費意識もある。加えて「いくら安くても、他人と一緒の服は欲しくない。古着とかこだわりのある一点モノを買いたい」という声もある(日経「リユースの騎士たち」シリーズ(3)から)。

ということは、着物リメイクのクオリティーやオリジナリティといった価値を、ネクタイにも認めてくれる人たちはいるということ? でも少数だろうなぁ。

 

セミセッテピエゲにたどり着いたけれど…

手作りこだわり派男性に刺激され、セッテピエゲを縫ってみたくなった。セッテピエゲとはイタリア語で7回折るという意味。ネクタイはスカーフ状のものを折りたたんで細くし、首に絞めたのが最初のかたち。本格を求めるしゃれ者に人気の原点回帰ネクタイがセッテピエゲなのだ。

我が家にはもちろんない。周囲に持っている人がいても、まさか解体させてくれとは言えない。フィレンツェの有名店タイユアタイのものは3万円ほど。オークションやメルカリを漁ったけれど、やはりお高め。

なかに、セッテピエゲとしてブルガリのネクタイが解体値段で出ていた。タイユアタイのものとは微妙に違うような気がしたけれど、ブランドものネクタイも勉強になるだろうと購入。

届いたものは確かにブルガリではあった。けれども芯が入っていて裏地もついている。本来のセッテピエゲにはそのどちらもないはず。一枚の布を手縫いで端処理してネクタイの形に折り込み、裏の中心部分を手縫いで止めていく。

締め心地はふわっとしていて、ノーマルネクタイとは全く違うとのこと。写真で見てもかっちり感がなく、絞めたときのやわらかさを想像できる。このセッテピエゲは縫うのに高い技術が必要で、技術者は限られているという。

これは独学ではなかなか難しそう。いつかチャレンジすることにして、とりあえずはブルガリから型紙を起こし、何本か縫ってみた。裏地にも表と同じ生地を使うこともあり、布地はノーマルタイの1.5倍ほど必要。

完成品、表から見たかんじではノーマルタイとの違いはよくわからない。正統セッテピエゲとは異なる(市場ではこれもセッテピエゲとして売られているが)と思うので、セミセッテピエゲと呼ぶことにした。

正統版だと結ぶのにコツがいるようだけれど、芯が入っていればノーマルと同じで、でもセッテピエゲの特徴である軽さと柔らかさはなくなってしまう。余分に布地を使って作る意味はあるだろうか。裏地に凝ったり、見えないところに贅を凝らす着物の心意気に通じるものはあるけれど。

たどり着いたものの、今後も楽しい面白いだけで続けられるかは、あまり自信がない。いずれにしろ、出来上がった11本はすべて一点ものにしようと思っている。世界に一本だけのネクタイ。撮影する前に締め手の手にわたってしまった、既に幻の一本もある。

 

セミセッテピエゲの小紋と白大島。ブルーの色合いがお気に入り。
ノーマルなタイでは通常ポリエステル等の別生地を裏地に使うが、K’s Rでは同布も使う。セミセッテピエゲは織り込んでいる分量が多く、裏地も同布が基本。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考サイト:

知らないと恥ずかしい ネクタイの起源と歴史
タイユアタイと西陣のコラボレーション

 

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