妹が春の異動で職場を去る人に、ちょっとしたものをあげたいという。
ハンドメイドのネットショップで入手した古布の巾着が気に入っていて、
こんなかんじに作ってくれたら買うよ、という。
見ると手触りの柔らかな錦紗で、綿も入った丁寧なつくり、全体の色合いもとてもセンスが良い。
子供が小さかったころは、上履き入れやらお道具入れやらといった巾着袋はなじみのもの。何かのおまけについてきたりもするから、どの家にもきっとごろごろしているんじゃないだろうか。でも、この巾着袋は全く違う。こんなおしゃれなものなら、もらっても嬉しい。よっしゃ、と引き受けた。
7種類ほどセレクトした着物地のなかから妹が選んだ二枚。紺地チェックの光沢のある大島紬と、柔らかな色合いでしぼのある唐草模様小紋。布地以外は私がアレンジ。紐通し部分はアクセントになるレンガ色の八掛。裏地は、紺チェックのほうは紐通しと同じレンガ色、小紋は柔らかいクリームイエローの八掛を利用することにした。
悩んだのは紐。巾着によく使うコード紐はいろんな色があるけれど、ちょっと安っぽい。ネックレス用の皮ひもか、ビロード調リボンか。手芸材料店であれこれ眺めたけれど、いずれもピンとこない。思い出したのは屋根裏の箱にいれたままの編み物用シルク糸。取り出してみればレンガ色と紺色が布地とほぼ同色。まるでこの時を待っていたかのようにシンクロしている。コード編みで紐にして、はしはビーズで留める。
小紋に嵌めたオレンジの細長ビーズ、実は壊れたネックレスの一部である。一見サンゴのようだれど、たぶん動物の骨。これまたあつらえたように紐と同色なのだよ。紺地の大島には小さく紺の点々が入った鼈甲風(水牛の骨のように見えなくもない)。手芸店で、ありきたりのプラスチックやウッドビーズの陰に隠れてたやつ。
綿も入れて完成した巾着はふわりと軽い。それでいて、絹100%やで!という存在感もある。我ながら、こんな小さな袋ひとつにこれほど気持ちが流れ込んでいくことに、少し驚いてもいる。気に入って使ってもらえるといいなあ。
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