
着物~ビンテージキモノ
~Kimono Remake
若いころにハマった着物、いつしか遠ざかってしまった着物、ビンテージ(アンティーク)キモノの面白さに、プロにワンピースやアロハシャツを仕立ててもらったこともあった。それもまた遠い昔のこと。
そんな忘れていたキモノリメイク熱が、ある日突然一枚の浴衣地で復活した。このたびはオリジナル&ハンドメイドでチャレンジ。一部簡単レシピも公開。[本文を読む…]
Open宣言:浴衣から始めよう
- 12/10 2019
ギフト展無事終了お礼&ハンドメイドの楽しい動画紹介しま~す
クリスマスギフト展、無事終了しました。 終了後別件でどたばたしていたら、もうすぐ一週間。 お礼が遅くなりました。お越しいただいた皆様、ありがとうございました。 ギャラリーで初めてK’sのリメイクを手に取っていただいた方、ご購入いただき、ありがとうございました。 年賀状だけのお付き合いになっていた高校時代の友人、私は挫折してしまったのにまだジムでがんばっているスイミングの友人、同じくソウルダンスの友人、大卒後の初職場の同僚…、案内状にフットワーク軽く反応していただき、久しぶりの積もる話に花が咲きました。 K’sのリメイクご贔屓様もリピートいただき、ありがとうございました。プレゼント用にとお求めいただいた帯やキルトのポーチ、ブローチ等々、相手の方にも気に入っていただけますように。 私が常駐しておらず、せっかくおいでいただいたのにお会いできなかった方々、申し訳ありませんでした。それでもお求めいただき、嬉しかったです。またゆっくりお話ししましょう。 バッグやストールを手に取って眺めまわし、ああこうやって作ればいいんだね、とつぶやいていた方、はい、そうやって作ればいいのです。どうぞご自分でお作りください(いやみじゃないよ)。以前も書いたことだけれど、アイデアにも技法にも著作権は無し。私も色々なところでヒントをもらってますもん。 ピンクッション作りのワークショップにご参加いただいた方も、ありがとうございました。思いのほかスタッフに好評(ということは一般参加は低調)でした。みんな針仕事なんかしないのかなぁ。する人はすでに持ってるしなぁ。ハンドメイドの楽しさが伝わるようなワークショップ、今後の課題です。 そのハンドメイド、自分でやるだけでなく、人がやっているのも見るのもとても楽しい! ということを最近再認識しています。TV番組では「美の壺」や「イッピン」等、プロの手仕事の凄さが作品の背景や蘊蓄と共に堪能できるけれど、今我が家でウケテいるのはNHKBSの「ソーイング・ビー」(イギリスの人気番組とか)。 洋裁の技を競うコンテストなんだけれど、参加資格はアマチュアであること。10人の参加者が簡単なものから難易度の高いものへと、婦人服や子供服、紳士用シャツなどのテーマにチャレンジし、勝ち残っていくという番組。最後は三人にまでふるい落とされ、優勝者が選ばれます。 制限時間もあって緊張感もたっぷりのなか、テーマは同じでも、デザインやパターン、布地や副素材の選び方などでオリジナリティがはっきり出るし、個性豊かな洋服がだんだんと出来上がっていくのが、見ているだけでもとっても楽しいんです。失敗したり、仕上がらなかったりするのもご愛敬、かえって応援したくなります。 こちらが公式ウェブサイト それからYouTube動画。最初のきっかけは忘れてしまったけれど、参考までにと検索したら、もうほんとにたくさんのハンドメイド系チャンネルがあってびっくりしました。そのなかで見てるだけで楽しい(ハマってしまい、ほとんどの動画を見まくった)チャンネルを二つご紹介。 ●ミシンおじさん 大阪弁のおっちゃんが、チャチャっとファスナー付きのポーチやポシェットを作っちゃう、その手際の良さと脱力系つぶやき解説がとっても楽しいのです。難しいファスナー付けがこんなに簡単にできるなら私もやってみたーい、と思うこと請け合い。 使っているファスナーは、実はおっちゃんが考案した一本ファスナー。BASEのショップで購入できます(partsland ミシンおじさん)。もちろん私も買ってやってみました。おっちゃんほどではないけれど、それなりに簡単にできました。おかげでファスナー付けに苦手感が無くなってとっても感謝しています。 チャンネル登録者数2.39万人。 ●LUU 子供の時から手先が器用で縫いものが大好き。そのまままっすぐ進んで、今も大好きなミシンを休みなく踏み続けている(大好きなことなので休憩しなくても全く疲れないとのこと)というその道のプロ。小物を中心に惚れ惚れするミシン技を披露してくれます。 レシピやパターンも公開されていて、こちらも一通り見惚れた後は、自分も同じものを作ってみたいとムズムズしてくる動画ばかり。でも、とてもこんな風には縫えない(私には)。 チャンネル登録者数6.66万人。「師匠」とあがめるコメントで埋まっています。 さてさて。初めてのオープンスペースでの展示会。グループ展というのが楽しかったです。色々教えてもらえてとても勉強になりました。ワークショップ以外にも、ディスプレイや品ぞろえ、価格設定などなど課題がいっぱい。 ものを作るのは楽しいけれど、それを「気に入った、欲しい、使ってみたい」と思っていただくのはとっても大変。でも、我ながらのお気に入りが出来上がり、それが買われていくというのは、自己満足が他の人と響きあう共感に一段上がったわけで、とっても嬉しいことなのです。売る・買うという行為は、まさに価値の共有なんですね。「つくる」と「買う」はもちろん、「売る」も人間に備わったプリミティブな喜びなんだと、あらためて実感しています。 - 11/10 2019
クリスマスギフト展に出展しま~す!
市内の『ギャラリー悠』さんにお誘いいただき、 恒例の”クリスマスギフト展”に参加することになりました。 K’s Remakeでは、バッグ、サコッシュ、ポーチ、スカーフ等、着物リメイクの小物を出展します。 DMの発送とFBでのイベントご案内が終わり、やっと自サイトでもお知らせです。 詳細はこちら:http://oishi-shunkei.com/gallary/custom57.html 10人の出展者の中の一人ですし、小物だけという制約があるのですが、初めてのオープンな場でのお披露目です。なるべくたくさんご覧いただきたいと、新規制作リストを作ってみました。が、なかなか思うように進みません(あまり無理も出来ず、なので)。いったいどうなるか、明けてみてのお楽しみ、といったところです。 それでも、これまでに作ったものもありますし、オンラインショップに出していないものも結構お見せできると思います。たとえば、クレージーキルトのポーチとか、新作のストールとか。 赤に墨色の濃淡の雲模様には、裏に黒のコーデュロイをあわせてマフラーにしてみました。肌触りも暖かです。これまた赤と黒の、ふわりと軽い絞りは袷のストールに。長さは少し短めですが、付属の黒のピンバッジを使えば、軽やかな風合いを生かした何種類かの巻き方が簡単に出来ちゃいます。模様は表が梅、裏が渦巻きと、それぞれで微妙に表情が異なります。 いずれも大胆な柄模様ながら、顔立ちを明るく、気持ちも明るくしてくれるあったかカラー。着物地の赤は日本人の肌色にとてもよく映えるのだなあと、作りながら再認識した次第です。 生地の残り具合もありますが、ネットでもお披露目できたら嬉しいな。とにかく頑張ってつくらなければいけませんね…。 - 06/26 2019
ミシン業界、モデルのわかりにくさ変わらず…エクシムプロ9600HLを選んだわけ
20年前にジャノメのコンピューターミシンを買ったとき思ったことを、今回もまた思った。 ミシン業界って20年たっても… - 05/20 2019
I.Miyuki 様 紅型帯のセットアップ–三枚はぎスカートとトップス
紅型と単色の組み合わせの未仕立ての帯地からのセットアップです。 単色はきれいなブルー、紅型の地色は生成りで、華やかな草花の模様が染め出されています。しっかりとした張りと質感で最初は少し硬さがありますが、着こんでいくうちに体になじんでくるのではないでしょうか。 水通しで色は出ませんでしたので、完成品もご家庭で手洗いしていただけます。 問題は生地の分量で、二色に分かれていることからもデザインに工夫が必要でした。スカートはブルー部分の三枚剥ぎ、トップスは紅型部分だけでは量が足りず、後ろヨークにブルーを使っています。 ご希望により、フロントはカシュクール風にダブルの打ち合わせとし、そでぐりはフレンチスリーブ風に肩を少し覆うようにしています。見返しやスカートのウエストゴム通しなど布地が足りない部分は別布を使いました。 仮縫いは行いませんが、トップスは完成前に以下の微調整が可能です。 ① 着丈:1-2センチ長くできます。 ② そでぐり:あきを深くできます。また肩部分のくりも深くできます。 ③ 前打ち合わせの調整、ボタン位置とボタン個数の調整ができます。 ④ ウエストダーツ追加で体に沿ったラインを出すことができます。 以下の画像でもご確認ください。サムネールをクリックすると大きな画像でご覧いただけます。 ご希望や感想等ありましたらコメント欄から送信していただくことも可能です。パスワード保護されていますので、他の方には開示されません。 - 04/17 2019
ハンドメイドと著作権
アニメなどの海賊版対策として国会で審議されていた著作権法の改正案、研究や忘備のためのキャプチャまで違法ダウンロードとする内容には、海賊版の被害当事者である漫画家や出版社ですら異を唱え、法案はお流れになった。 もちろん著作権は守られるべきだ。けれども保護に広い網をかけると、人の営みの重要な部分が委縮し、文化や芸術も硬直しかねない。ひとが何かをするのにも、何かをつくるのにも、模倣は必ず入り込むものだし。 そもそも既に出来ているものを「うつしとる」のは、ゼロからつくるより断然労力が少ない。専門テクニックもいらない。アレンジや発展も、スタートラインが高いと楽である。ハンドメイドの型紙も、市販品やリメイク本の付録を利用すればアマチュアでも楽勝。 でもそうやって作ったものを売ると、著作権等の違反になる場合がある。あれこれ眺めていたら、とても考えさせられる事例があった。特殊な刺繍を施した作品についてである。 Aさんは、サイトBで紹介されていたレシピで作った刺繍作品を、ハンドメイドサイトで販売していた。受賞したくらいだから、きっと優れた作品だったのだろう。ところがこのレシピ、実は全く別のCさんが考案したものだった。サイトBはCさんに断りもなくレシピを掲載していたのだ。 Aさんは作り方を問われ、自サイトでもレシピを公開してしまった。Bサイトで二次使用・商用利用OKとされていたことと、レシピを技法のひとつととらえていたこともあり、著作権には触れないと思ったのだ。それを当のCさんが目にし、クレームをつけた。 悪意はなかったとはいえ、自分が「盗作」していた(と非難された)ことがショックで、Aさんは受賞も返上し、自サイトからも関連投稿をすべて削除し、それどころかハンドメイドの制作販売もやめてしまった。同じ技法で同じモチーフでつくる以上、著作権に触れないものをつくるのは不可能だ(だから怖くてつくれない)、と(委縮そのものだなぁ)。 その決意表明のブログには、慰めや応援のコメントがたくさん入っていた。多くの人がこの極端な結論に心を痛めたのだ。CさんもAさんに、そこまでのことを求めたわけでもない。むしろ一人の作家の活躍の可能性を奪った結果に、謝罪の言葉を記している。 しかもである。Aさんが行ったことは、実は著作権違反ではない。技法やアイデアは著作権保護の対象ではないし、レシピに著作権が認められるのは、文章や作図やレイアウトに芸術的な作者固有の「表現」がある場合のみ。一般的なレシピは取説やマニュアルと同様の扱いなのである。 Cさんの非難も、モノを作って売る際のモラルを問うものであった。それでも、ここぞとばかりに出てくるバッシング輩も多かったのだろう、Aさんはモノ作りで一番大切なものを失ってしまった。つくりたい!という情熱を。 常々、オリジナルってそんなに偉いのか? 作家ってそんなに偉いのか? と思っていた。誰の作品も真似せず、どんな作品も参考にせず、もっと言えば、誰かにも何かにも微塵もインスパイアされず、己の力だけの純粋培養で作品はできるのか? ある作家が、それまでだれもやっていない技法や表現で作品を作れば、模倣されることを覚悟したほうがよい。ピカソの作品がキュビズムになったのは、多くの人が彼が切り開いた新しい表現に続いたからだ。これを「パクるな」と保護していたら、今日のピカソの評価は違ったはずである。 シャネルはコピーを意に介さなかったという。コピーが本物を超えられるわけがないという自信と、むしろ宣伝になるという読み(偽ブランドは著作権違反ではなく、意匠権と商標権の侵害)。 アニメ作品のダウンロードがシャネルの偽バッグと違うのは、デジタルデータが完全コピーである点である。本物と同じものがただで手に入れば、当然本物は売れなくなる。シャネルのように本物と偽物の購買層が異なることもないから、作家は食えなくなり、作品は制作されなくなる。ファンにとっては不本意なことだが、アニメも消費財と思っている読者はそんなことは気にしない。 (たとえ粗悪な偽バッグであっても)違法コピーがなくならないのは、それを求める消費者がいるからであり、市場の原理に従えば、消費者のマインドが変わらない限り違法コピーはなくならないことになる。 デジタル作品に関して言えば、正規でフリーもしくは割安に作品が提供され、作家には何らかの形で正当な対価が払われるなら、様子は変わるかもしれない。あるいはダウンロードフリーにして、その際広告収入が入る仕組みをつくるとか(そんな意見を新聞で読んだ)。この時代、著作権そのものについても問いなおす必要がありそうである。 話がごちゃごちゃしてきた。芸術作品とブランドとハンドメイド、デジタル品と物品とを同列においているからだ。一般的にも、違法性と「ルール」違反の違いが意識されておらず、そこに敬意やモラルがまぜこぜで語られていたりもする。 ハンドメイド販売で著作権違反を心配している方も多いだろうから、整理してみよう。手芸本の多くには、書籍及び付属物(型紙)の無断転載や複写は著作権違反である、と記載されている。リメイク作家のサイトには、著作権は自身に帰属する、と書かれていたりする。型紙販売では、商用利用禁止としている場合もある。 それで混同するんだけれど、ハンドメイドのほとんどは実用品なので、著作権保護の対象ではない。境界のあいまいな「作品」があるにしても、実用と機能を離れた高い芸術性がなければいけないとされる。ただし近年、純粋芸術という高いハードルではなく、「作成者の個性が発揮されているか否かを検討すべき」という判例も出たりしている(下記参考①)。 つまり厳密な線引きはできず、個別に判断するしかないわけで、だから著作権に触れる「可能性がある」ということになるし、ハンドメイドサイトも「危ないことはするな」と警告しているわけだ。 ちなみにアメリカでは、機能的・実用的なハンドメイド作品自体は著作権保護の対象外だけれど、実用性から離れた装飾部分のデザインや図柄には著作権が認められているという。 参考①:手芸作品及び手芸レシピの法的保護 ハンドメイドで気を付けなければいけないのは、むしろ実用新案権と意匠権、商標権ではないのか。以下には翻案権という聞きなれない権利も出てくる。コメントと回答も参考になる。 参考②:法律違反にならないでハンドメイド品を販売するには 前記の刺繍作家Cさんは、レシピはわが子のようなもの、それがコピーされて売られていくのはいやだ、と訴えている。個人で楽しむだけなら良いけれど、それで商売されるのは許容できない、ということだ。もしこのように商用利用されるのなら、個人の方向けにレシピを公開することもできない、とまで言っている。 コンピューターのMacとWindowsでいえば、OSをフリーで公開したWindowsがシェアを獲得した。複写や模倣OKは、普及、拡散で大衆化し、保護は一部の人の占有により高級化する。どちらの路線をとるかはビジネス戦略というだけではない。誰のためにつくるのか、ということと、技術や作品は誰のものなのか、ということもある。 Cさんは技法を(レシピも?)商標登録し、本を出し、キットを販売し、講座で教え、認定制度まで設けている(家元になっちゃったのね)。Mac方式をとったわけだ。レシピも技法も一部の愛好家の間で生き続け、師範認定されれば誰かに教えることもできるだろう。ただし商品として販売はできない(ライセンス料を払えば可能かな)。 ということは、この技法を使った作品を入手するには、本や講座やキットで自作するか、Cさんの作品を購入するしかない。自分では作れないけれど欲しい、でも作家ものは高くて手が出ない、という人は永遠にこの技法でつくられたものを入手できない(シャネルほどにブランド価値が高まれば、違法コピーが出てくるかもしれないが)。 ハンドメイドが苦手な人はけっこういる。入園入学の際に求められる「お母さんの手作りバッグ(袋)」も、時間がない、ミシンがない、うまく縫えない保護者(お母さんだけにあらず)にとってはものすごい負担で、だから近所の手芸店は春先、入園入学グッズの縫い子さん募集の張り紙を出す。注文をとり、各学園学校の指定に沿って縫わせるのである。 上記の刺繍も技法が解放されていれば、Cさんほどの「芸術作品」を作る作家の他にも、汎用品や普及品を制作販売する人も出てきて、市場は賑わったかもしれない。 個人的には、デザイン性の高いものをまるごと同じに作って売るのはいただけないと思う。違法でなくても、敬意やモラルや矜持の問題として。プロなら自分のセンスで勝負しなくてどうする、とも思う。 それでも、シンプルなトップスなど、自分サイズで適当に型紙を起こしても、結局ほとんど同じような仕上がりになる。「自分で型紙を起こせないようなやつは売る資格なんかない」というプロのパタンナーがいたが、私はそうは思わない。身に着けるものはアート「作品」ではない。通園通学グッズと同様、素材を加工し、求める人に届けるのは必要な役回りだ。使えるものは使い、そこに自分らしさを加えていけばよい。 このサイトでも「レシピ」を公開している。ダウンロードフリーである。公開した時は自作の販売もしていなかったし、そもそも著作権を主張できるほど「芸術的」なものではない。それこそ機能的実用品である。ちなみに当サイトで一番アクセスが多いのはこのレシピページである。 素材の着物については、とてもオリジナルだと感じている。でもこれらの着物を織った人も染めた人も、自分を「作家」だとも思わなければ、完成品を「作品」とも考えなかっただろう。彼らの職人仕事に、その無名性に、感謝と感動と敬意を覚える。 大衆のものであった着物(=実用品)が大衆のものでなくなった今、着物の大衆化がリメイクだと思っている。だから私はむしろアンチ「作品」、アンチ「作家」。自分のことは、強いて言えば媒介者、あるいはアレンジャーか。 ほどいて何枚かの布になった着物を眺める。どうリメイクすると眠っていた着物地が目覚めるのか。頭のなかに凝ったデザインはない。着物がそうであったように、シンプルな形が一番着物が生きるような気がする。むしろ考えるのは縦横斜め&裏表。 私の目標は、オリジナルの素材の素晴らしさがよみがえり、更に、和(着物)というイメージや制約を超えた何かが生まれること。日々の暮らしに着物リメイクが当たり前の顔で溶け込んで、生き続けて、ほんの少し身に着けた人の気分が良くなったりしたら嬉しい。デザインもパターンも、そのための一手段でしかない。 それにしても、とあらためて思う。技法は誰のものだろう。アイデアは誰のものだろう。完成した「作品」は、誰のものだろう。 ものを書いたり作ったりしていて、私は自分の「作品」をわが子のようには思ったことがない。子供だって親に属する所有物ではない。作者や親の手を離れたとたん、彼らは皆独立した一個の存在になる。あるいは「みんなのもの」になったりする。 昔書いたものを読むと、自分が書いたと思えないことがある。何かに書かされたみたいに。あるいは勝手に生まれてきたみたいに。書くという、実用や機能を離れた行為においてすら、自分は媒介者だと思うのである。 - 03/28 2019
縦のものを斜めにしたら 粋なネクタイ 出来上がり!
ネクタイを縫ってみようかなと、ふと思った。 最初は紺ベースの縦縞を選んだ。ちょっと綿のようにも見える薄手の紬で、ダンガリーっぽい風合いなのに、品の良い控えめな光沢もある。縦縞に横に白いラインが入っている。これを縦でも横でもなく斜めにする。 自作派男性に感心しながら試作~完成まで 試作はダウンロードフリーの型紙を利用した。この型紙作者は作り方も公開していたので、それに従って縫ってみた。芯は手持ちの接着芯で、全てミシン縫い。 この男性、自分の仕事にぴったりの柄のネクタイが欲しい、という一心で自作に至り、型紙と作り方を公開している奇特な方。宇宙や天文で教壇にたっているので、星や惑星柄のネクタイが欲しかったのだという。 ネクタイの作り方(型紙無料ダウンロード) 今回調べていて、ネクタイを自作している男性が結構いることを知った。現物をばらして型紙をとり、縫い方を研究している。ある方は、最初はノーマルなネクタイから始まり、ついにセッテピエゲという高度なワザのネクタイまで縫うようになってしまった。しかも手縫いで。 ひたすら感心。 話は戻って最初の一本。薄くて軽い仕上がりで、本格っぽくはないものの、かえって締めやすそう。これもありだろうけれど、商品としては気が引ける。夫の古いネクタイを解体し、その芯で二本目を試作。今度はしっかりとしたネクタイになった。 専用の芯をネットで購入。売り物になるまでは何本か縫わなければいけない。カタカタちくちくとほぼ毎晩縫った。手縫い+一部ミシンの組み合わせでK’sの完成形ができた。 驚いた! 着物がこんなにネクタイにハマるなんて ネクタイがスカーフやリボンと違うのは正バイアスであること。布目に対して45度に裁断しなければいけない。 縦が斜めになると、縞はレジメンタル(風)になる。最初の一本だと、斜めに走る黒紺グレー赤に90度の角度で白のラインが交差する。縦に細長い幅5~9センチの面積に、布地の模様が凝縮される。 驚いた。縦縞とも横縞とも違う表情が生まれている。広い面積で全身を覆う着物の一部を狭く細く切り取っても、本来の縦を斜めにしても、着物地の魅力が全く損なわれない。どころか、むしろその魅力が鮮明になっている。 バイアス裁断は、ネクタイが適度に伸びて締めやすく、かつノットをゆるみにくくするための製法だけれど、斜めにカットされることによって、狭い面積ながら縦の模様と横の模様がまんべんなく、バランスよく切り取られることになる。模様が斜めに流れるのも、小さな面積にダイナミックな動きを出すのに成功している。 斜めってすごい!で、また着物地が、この斜めに生き生きと答えてくれることに感嘆!手持ちの着物地を見る目が一気に「ネクタイ目」になった。これはどうだろう、あれはどうだろうとうずうずして、気が付けば(試作・モニター用以外に)模様違いの11本が出来上がっていた。 「和」を超えた着物柄と織りの個性 着物地からつくられたネクタイは結構市販されている。西陣織りや友禅染の和柄が多い。どういう人が身に着けるのだろう。外国人受けをねらったものだろうか。桐箱入りのオーダーメイドネクタイなどは、また違う特別感を提供しているのだろう。 かと思うと、着物産地でネクタイに特化して織られたものもある。たぶんネクタイ用の幅で織られているのだろう。柄は若干の和テイストを残しながらも、既成のネクタイ生地に限りなく近い。 そこには、ネクタイはこういう柄や織りのもの、という固定観念があるようにも思える。どうやら日本の着物ネクタイは、一方はいかにもな和柄と、他方は締めやすい定番ネクタイ織り柄の普及品と、二極分解しているようである。 私が着物地で縫ったものは、この間にいる。もともと”「和」にとどまらない” 着物ばかりを集めていたのでこてこての和柄はあまりないものの、まさかネクタイなんぞになるとはどの着物地も思っていなかった、ネクタイ柄の定番からは少し離れたもの。 縞や格子やドットや小紋などはネクタイ用としてもグローバルな柄模様で、それでもネクタイ用はあの面積を想定して織られている。けれども着物地は違う。 なのに、全く想定されていなかったネクタイに、これらの着物地が水を得た魚のようにハマるのだ。たとえばお召の一種で縫った三本。高級な織りの着物として一世を風靡したのに、いつかほとんど生産されなくなってしまったお召。おしゃれ着として工夫を凝らした色柄模様に面白いものが多い。 スモーキーピンクと赤とグレー濃淡の迷路模様は、中でも一番のお気に入り。黒のジャケットにあわせれば、胸元が一気に華やかになって、でも甘すぎず、渋い大人の味わいもある。ネクタイのジャガード織りと違ってピカピカした光沢がないのも良い。どうだ、こんなの定番ネクタイにはないだろう!? >K’s Remake.shop>ネクタイ :ただいま四本のみ(残り四本出品準備中) 赤のレジメンタル風もいいなあ。綿の普段着の着物なのに色合いが絶妙。アメリカの政治家の制服みたいな赤ネクタイ、日本で締めている人をほとんど見ない。でも、赤もこんな落ち着いた色合いなら一味違う。軽くて、ナチュラルで、素朴な風合いもあって、とても好もしい。 と自画自賛ばかりでは仕方がないので、何本か友人に見せた。見たとたんぱっと赤の縞を手に取り、夫にと即買いいただいた。普段ネクタイをしない人だからこんなのが良いのよと。お似合いだと私も思ったし、ご本人にも「ひとめで気に入った」とおっしゃっていただけた。とっても嬉しい。 ネクタイを贈るってどうなんだろう… 今回出品しているのはハンドメイドのモールと自サイトで、おそらくネクタイを求める男性が検索一発でたどり着く場所ではない。だいたい「ネクタイ」&「着物リメイク」なんて検索ワードに入れないだろう。とすると、ハンドメイド好きで、かつ着物リメイクに興味を持つような女性に、プレゼント用に買っていただくしかない。 ここで疑問が二つ。男性はネクタイを贈られてうれしいだろうか? そして、何故着物リメイクのネクタイがオンラインショップにあまり出ていないのか? ズバリ、「皆さんバレンタインにネクタイを贈られてうれしいですか?」 という質問コーナーがあった。答えはいろいろ。 趣味じゃないのを贈られたらかえって迷惑、自分のセンスも試されるのでやめておいたほうが無難、一緒に店に行って買ってあげるのがおすすめ、という人もいれば、好きな彼女から贈られたらめちゃくちゃ嬉しい、大事な仕事のときの勝負ネクタイにする、何本あっても困らないものだからありがたい、という人もいた。 先日、知人がおいしいワインをご馳走してくれるというので、ネクタイを持参した。最近こんなことやってるのよ、という話ついでに。翌日、さっそく今日締めています、自分では選ばない柄なので新鮮です、とメッセージ。そうか、そういう視点もあるのか。 二つ目の疑問。考えられる理由は、作るのが面倒なのに売れないから。 正バイアスのカットは気を使うしテクも必要。しかも、着物は反物の幅が狭い。ネクタイ用の生地は幅が50cm、長さは65cm必要である。これを大剣先と小剣先、中はぎと三枚にカットしてはぎ合わせる。着物でも幅38cmあればなんとか一本(若干短め)作れるけれど、古い着物は幅が足りない。水を通して縮んでいるものも多い。 結局ほとんどのネクタイを、私は4枚はぎで作った。ノットに近いはぎ目は目立たないよう柄合わせも必要で、結構時間がかかる。おまけに、布地を斜めに使うネクタイは、小さな面積なのに分量がかなり必要で、かつ三角の使えない端切れがたくさん出る。限られた着物地の(希少な着物地であれば余計)有効活用には不向きである。 それから「和」のイメージの強さ。和柄は(特に若い)男性にはあまり人気がないだろう。確かにビジネススーツには合わない。つまり、マーケットが狭い。 では贈る側からするとどうだろう。就職祝いやバレンタインにリメイク品を選ぶだろうか? やはり新品のブランド品が候補だろうか。 ただし、メルカリの躍進もあって、消費者の感覚は変わってきていると聞く。リユースに抵抗がない。アンチ大量生産&大量消費意識もある。加えて「いくら安くても、他人と一緒の服は欲しくない。古着とかこだわりのある一点モノを買いたい」という声もある(日経「リユースの騎士たち」シリーズ(3)から)。 ということは、着物リメイクのクオリティーやオリジナリティといった価値を、ネクタイにも認めてくれる人たちはいるということ? でも少数だろうなぁ。 セミセッテピエゲにたどり着いたけれど… 手作りこだわり派男性に刺激され、セッテピエゲを縫ってみたくなった。セッテピエゲとはイタリア語で7回折るという意味。ネクタイはスカーフ状のものを折りたたんで細くし、首に絞めたのが最初のかたち。本格を求めるしゃれ者に人気の原点回帰ネクタイがセッテピエゲなのだ。 我が家にはもちろんない。周囲に持っている人がいても、まさか解体させてくれとは言えない。フィレンツェの有名店タイユアタイのものは3万円ほど。オークションやメルカリを漁ったけれど、やはりお高め。 なかに、セッテピエゲとしてブルガリのネクタイが解体値段で出ていた。タイユアタイのものとは微妙に違うような気がしたけれど、ブランドものネクタイも勉強になるだろうと購入。 届いたものは確かにブルガリではあった。けれども芯が入っていて裏地もついている。本来のセッテピエゲにはそのどちらもないはず。一枚の布を手縫いで端処理してネクタイの形に折り込み、裏の中心部分を手縫いで止めていく。 締め心地はふわっとしていて、ノーマルネクタイとは全く違うとのこと。写真で見てもかっちり感がなく、絞めたときのやわらかさを想像できる。このセッテピエゲは縫うのに高い技術が必要で、技術者は限られているという。 これは独学ではなかなか難しそう。いつかチャレンジすることにして、とりあえずはブルガリから型紙を起こし、何本か縫ってみた。裏地にも表と同じ生地を使うこともあり、布地はノーマルタイの1.5倍ほど必要。 完成品、表から見たかんじではノーマルタイとの違いはよくわからない。正統セッテピエゲとは異なる(市場ではこれもセッテピエゲとして売られているが)と思うので、セミセッテピエゲと呼ぶことにした。 正統版だと結ぶのにコツがいるようだけれど、芯が入っていればノーマルと同じで、でもセッテピエゲの特徴である軽さと柔らかさはなくなってしまう。余分に布地を使って作る意味はあるだろうか。裏地に凝ったり、見えないところに贅を凝らす着物の心意気に通じるものはあるけれど。 たどり着いたものの、今後も楽しい面白いだけで続けられるかは、あまり自信がない。いずれにしろ、出来上がった11本はすべて一点ものにしようと思っている。世界に一本だけのネクタイ。撮影する前に締め手の手にわたってしまった、既に幻の一本もある。 参考サイト: 知らないと恥ずかしい ネクタイの起源と歴史 タイユアタイと西陣のコラボレーション